新卒・中途で迷う就職先、大手企業とベンチャーどっちが正解? ITエンジニアの視点で解説

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ITエンジニアを目指して、新卒としてこれから社会にでていく時や、転職して新たな仕事の環境を求める時、働く環境の選択肢は多くあります。大きく分けて次のように分類できますが、ITエンジニアとしてのキャリア形成の視点で何を選択すべきかの決断は簡単ではないですよね。
・IT企業か事業会社IT部門か
・大手企業かベンチャー企業か
・就職するか起業するか
・会社を立ち上げるかフリーランスか

長年、ITエンジニアとして働いてきた中で、それぞれの良さや注意点を経験してきましたので特徴をまとめました。
就職活動中の方、転職を考えている方の参考になれば幸いです。

本記事でわかること
・状況別のお勧めの就職先
・大手IT企業の特徴
・ITベンチャー企業の特徴
・事業会社IT部門の特徴

<筆者プロフィール>
・会社勤め35年、ITエンジニア
・大手IT企業・ITベンチャー・事業会社IT部門を経験
・事業責任者や部門長として、人材育成・採用・組織運営を長く経験
・個人事業主としても活動、マイクロ法人も設立・運営

まず結論

就職すべきは大企業かベンチャーか? 新卒は? 中途は?。
結論を先に申し上げます。

●ITエンジニアとしてトップ数%の尖ったエンジニアを目指すなら、どの道を選んでも関係ない

「トップ数%」は、日本に数名、世界でもそんなに多くいるわけではないエンジニア。そんなエンジニアを目指すなら、まずは技術力そのものを高めるべきであり、会社がどうとか、フリーがいいとか、ベンチャーがいいとか、大手は駄目だとか、そんな低次元な話ではないです。トップを目指すなら、自分の技術は自分で磨くしかないので、その意味でどの道でも関係ないということです。

技術を磨く上で、周辺の環境が整っているほうが良い場合や、技術レベルの高いエンジニア集団の中のほうが刺激があって良い場合がありますので、そのような環境を求めるなら大手でもベンチャーでも観点を絞って会社を選ぶのが良いです。

●新卒でITエンジニアを目指していくなら、大手IT企業を勧めます

新卒の場合、ITエンジニアとして一人前になることに合わせて、社会人として一人前になることが大事です。大手企業・ベンチャー・事業会社IT部門のそれぞれについては後述しますが、長年見てきた中では、社会人を高い水準で育成できるのは大手企業のみです。今後歩んでいく長いキャリアの中で最も大事なのは、社会人としての基礎を身に着けていることです。これがないといずれ仕事に行き詰ります。

●中途で転職してレベルアップを目指すなら、ベンチャー企業を勧めます

自身が目指す技術領域(クラウドとか、AIとか)や、ITエンジニアの職種(PMとか、BAとか)が明確なら、その仕事ができるベンチャー企業を勧めます。会社の安定性というリスクはありますが、ベンチャーの場合はストレートにその仕事ができる場合が多いです。しかも、その仕事以外の余計は仕事(定例報告とか、余分なレビューとか)が少ない可能性がありますので、目指す仕事に没入できる可能性が高いです。

●もし営業や経営に自信があるなら、起業やフリーランスの可能性はある

起業やフリーランスを選択肢として検討しているなら、本当に営業活動はできるのか、経理を自分でやれるのか、決算や税務もやる覚悟はあるか、今一度確認することを勧めます。ITエンジニアとしての仕事以外の仕事が非常に多くなるので要注意です。覚悟があるなら否定はしません。

●売上・利益を求めらる環境が嫌だったり、そんなに成長を求めないなら事業会社IT部門を勧めます

企業で一般的に求められる売上や利益の達成に辟易している場合、またITエンジニアとしての成長をあまり求めない場合には、事業会社IT部門も選択肢です。ただしこのIT部門には後述する2つのタイプがあるため見極めが重要です。

それぞれの特徴

結論を先に述べましたが、その根拠となる情報として、企業の種別ごとに特徴を列挙します。
よくメリット・デメリットで説明することがありますが、メリット・デメリットはそれぞれが裏返しになり、話が冗長になるだけなので。

これまでの経歴の中でどの企業種別にも属してきましたので、内部で見聞きしたことや実際に体験したことを飾らずに記述します。

大手IT企業の特徴

大手IT企業は次のようなところです。

  • 人材が豊富、平均的に社員の質は高い、有名大学をでた優秀な社員が多い
  • 余剰人員は多い、それでも売上と利益があって成り立つ
  • 能力がさほど高くなくても仕事になる、能力がさほど高くなくても生きていける
  • 会社の看板が信用になるからお客様が話を聞いてくれる
  • 客に迷惑をかけるミスをしても最終的には誰かがカバーしてくれる
  • 大きな仕事ができる
  • 上司と合わなくてもしばらく待てば異動で変わる
  • 余剰人員が多いので体力があり非常時の対応力が高い
  • 上層部に暇な人間が発生する、無駄な仕事を仕事化する
  • 末端の仕事の負担が膨大、資料をきれいに作らないといけない文化
  • 仕事量の8割は社内向け、客向けは2割さければ良い方
  • 責任の所在は不明確、無駄が多い稟議の文化
  • 石橋を叩いて渡る、渡る頃には手遅れ
  • 中期事業計画のような発想をする

ITベンチャー企業の特徴

ITベンチャー企業は次のようなところです。

  • 人材がとにかく不足
  • 極めてとんがった人材がごく数名で仕事をまわす
  • その他の人材は大企業に比べてレベルが低い、日本語の文章が書けない、書く訓練がされていない
  • 仕事の中で人を訓練する余裕がない
  • 育つ人だけが育つ、育たない人は育たない、育ててはもらえない
  • 売上を作ることが最優先、その他は何ならどうでもいい
  • 長期的な展望が必要と思いつつも目先足元で精一杯
  • ルールは未整備でともすれば何でもあり
  • 無駄な資料は不要、大企業のような資料作りはしない、完成度は50点で十分
  • 仕事はダイナミック、スピードのある人材には楽しめる環境
  • 社長が現場に近いので意思決定は超迅速
  • 石橋を渡るかどうかはほぼ直感で判断
  • 仕事のサイズは小さい、大きな仕事は来ない
  • 上司と合わないときは面倒、人事異動がないので上司は変わらない、転職しかない場合もある
  • 中期的な計画をうまく作れない、来年の売上をどう作るか程度

事業会社IT部門の特徴

事業会社IT部門は大きく2種類に分かれる。

タイプ1:変化しないIT部門

「タイプ1:変化しないIT部門」は次のようなところです。

  • 競争がない、人が育ちにくい
  • 指示待ちの傾向
  • 上層部が変化しない、上層部は号令をかけるが変革を推進しない
  • 新しいやり方にトライしない
  • 社員の能力が上がらないので外部ベンダーへの依存度が高い
  • 全体的に井の中の蛙、視野が狭い、視座が低い
  • IT業界の動向に疎い
  • 売上や利益の達成を強く求められない
  • コスト削減は強く求められる
  • 成長の機会は少ない
  • 社内特殊能力(部門間調整能力など)が身につく

タイプ2:革新を推進するIT部門

「タイプ2:革新を推進するIT部門」は次のようなところです。

  • 最先端の感覚を重視し、先頭にたって実践を進めるリーダーがいる
  • IT部門が改革の推進役との自負がある
  • 人材が活性化、人材の流動性も高い
  • 実ビジネスでITの効果を試せる
  • 最新の技術動向に敏感
  • PoCが早い、小さく作ってすぐに試す文化
  • スピード重視、内製化を追求する傾向
  • 新しいことへのチャレンジが多い

言うまでもなく、それぞれに良いところ・良くないところがあります。

何を求めるかで適した環境は変わるので、一概にどこが良いとは言えませんが、「成長はあまり求めない、変化もあまり求めない」という場合にのみ事業会社IT部門のタイプ1の検討を勧めます。その他の場合にはお勧めではないです。

また起業や独立を否定はしませんが、今一度ご自身の覚悟のほどを確認されるのを勧めます。甘くはないです。

まとめ

ITエンジニアとしてのキャリアパスは多様であり、自分がどのような働き方を望むのかによって選ぶべき環境は異なります。

・新卒であれば、社会人としての基礎を固められる大手IT企業が堅実な選択肢です。
・一方で中途採用でキャリアアップを目指すなら、目的とする技術領域に特化できるベンチャー企業が適しています。
・事業会社のIT部門は安定を求める人には向いていますが、成長志向には物足りなさを感じるかもしれません。
・起業やフリーランスという道もありますが、技術以外の業務も含めた覚悟が必要です。

どの選択肢にも一長一短がありますが、重要なのは「自分がどのように成長したいか」「どんな働き方を求めているか」を明確にし、それに最適な環境を選ぶことです。